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有機質肥料を用いた養液栽培
以下の論文もご覧ください
1. Effect of corn steep liquor on lettuce root rot (Fusarium oxysporum f.sp. lactucae) in hydroponic cultures. Science of Food and Agriculture. 94(1) 2317-2323. 2014.
2. Organic hydroponics induces systemic resistance against the air-borne pathogen, Botrytis cinerea (gray mould). Journal of Plant Interactions. 10(1) 243-251. 2015.ダウンロードはこちら
3. Effects of organic fertilizer on bok choy growth and quality in hydroponic cultures. Agronomy. 11(3) 491. 2021. ダウンロードはこちら

有機質肥料で養液栽培???
 本来は,有機栽培の定義として土耕であることが明記されていますので,「有機養液栽培」と書くとかなり微妙な表記になります.このため,回りくどいですがここではこのように書きました.この研究は野菜茶業研究所のプロジェクトのメンバーとして参加しているものです.通常,有機栽培,特に水耕栽培で,養液に有機質を投入すると水が腐ってしまいます.しかし,好気的条件下で毎日,あるいは数日おきに少しずつ有機質を投入していくと,養液中に微生物生態系ができあがり,有機物がアンモニア,亜硝酸,硝酸の順に分解され,植物に吸収されていきます.足りない栄養素を何らかの形で追加投入することにより,作物残渣や食品系廃棄物を肥料としてリサイクルし,作物を育てることができそうです.

有機質肥料で作物が育つのか?
 写真左は2008年,初めての栽培実験で,有機質肥料,右は化学肥料を用いてメロンを育てた状況です.化学肥料で栽培したメロンは,よく生育し,収穫果も美味しく堪能できました.しかし,有機質肥料ではメロンがひねくれてしまい,きちんと育てることができませんでした.その後の調査で,メロンを定植する段階で十分な窒素量が養液中にないと,メロンの苗の生育はひどく抑制されるものと考えられました.

有機質肥料による根の変化
 有機質肥料で育てた作物にもっとも特徴的な変化は,根から細根が多数,掲載されることです.左側の写真は化学肥料,右側は有機質肥料を用いて栽培されたメロンの根です.遺伝子発現レベルで何か大きな差があると思いますが,今のところ原因は未解明です.

チンゲンサイの栽培
 苦節数年後,だんだんコツがわかってきて,チンゲンサイくらいならば化学肥料とそれほど遜色なく栽培できるようになってきました.写真右側が化学肥料,左側2列が有機質肥料です.この研究成果についてはこちらの論文(Agronomy誌)をご覧ください

有機質肥料を使うと病気にかからない?
 この栽培システムの最大の特徴は,有機質肥料を投入したトマト,レタスなどは病気にかかりにくくなるということです.写真左は有機質肥料,右は化学肥料です.養液中にトマト根腐萎凋病菌が投入されています.トマトの草丈が全く違うことがわかります.現在,有機質肥料またはその分解物から出る抗菌物質,バイオフィルムを構成する細菌による根の保護,植物の獲得抵抗性など,さまざまな作用が相加的に関与しているのではないかと考えられています.
 

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